スキージャンプでは、ほとんどの選手が両方のスキーをVの字に開いたジャンプをしています。
1992年のアルベールビル(フランス)のオリンピック大会では、出場した選手でV字ジャンプをしている人は半分もいませんでした。
しかし、前回の1994年のリレハンメル大会(ノルウェー)では、ほとんどの選手がV字ジャンプで優勝を競いあいました。
V字ジャンプはどうして遠くまで飛べるのでしょうか?またどの様な方法でそれが確かめられたのでしょうか?
ここでは風洞実験装置という方法を使った、わが国の研究について紹介しましょう。
それは、鳥には翼があり、飛行機にも翼があるからです。そして、その翼の形にその秘密があるのです。
翼の形を良く見ると、前の部分が厚くふくらんでいます。後ろの部分は、自然に滑らかに薄くなっています。
前の部分をもっと良く見ると上の方が盛り上がっています。
このような翼の形のとくちょうが、空中をすすむときに『揚力』という翼を上に引き上げる力を生み出すのです。
このことは、空を飛ぶ鳥の翼と関係があります。
大空をゆうゆうと飛んでいるトンビやカモメを想像してみましょう。
翼を大きく広げると、空気をしっかりとらえることができ、空中に浮く力が得られやすいのです。
スキーをVの字に開くこともこれと同じことだと考えられます。
スキージャンプ選手とまったく同じ装置(スキー、ヘルメット、てぶくろ、ジャンプスーツ、ゴーグルなど)を付けた人形を使って実験をします。 ジャンプ選手が空中で受ける風の強さと同じ程度に空気の流れを調節して、実験をします。
風洞実験装置の性能:
(風洞実験は、東京大学先端科学技術研究センターの協力を得て行われました)
風洞実験装置の全体図:
スキージャンプ選手と同じ大きさの人形に、実際に人間がジャンプするのと同じように本物のスキーやヘルメットなどを付けた状態で、空気の流れによって生み出される力を測定します。
風洞実験装置では、スキージャンプ選手が空中で受ける風圧(空気抵抗)や、「翼の型」によって生み出される揚力(上に引き上げる力)などを実際に計ります。
その結果、最も良い空中姿勢が調べられるのです。V字ジャンプの理想的姿勢(フォ-ム)はこのようにして明らかにされたのです。
⋄ 風洞実験装置による測定風景♦
これは、V字ジャンプとは違い、これまでどおりスキーを平行にした時の影響を風洞実験装置で調べている図です。
腕を体にピッタリ付ける場合と腕を体からはなす場合を比較すると腕をピッタリつける場合のほうがより遠くへ飛べることがあきらかになりました。
この写真は、煙風洞実験装置というものを使って、風の流れが目で見えるように工夫したものです。
この装置を使って、風の流れの乱れ具合や、渦のできかたを調べ、理想的な空中姿勢を見つけるのです。
スキージヤンプ選手の人形の両脚の開きの大きさをいろいろと変えて、その影響を調べます。
また、スキーと体との角度の違いについてもその影響を調べて、理想的な空中姿勢を追求します。