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雪上歩行の効果

©1993 NAOC TM NAOC 7-056

人類の歩みとでこぼこ


雪道は歩きにくい

雪道を歩いたり走ったりするのは、滑ったりぬれたりするのでまっぴらだ、と思っていませんか?

雪のある路面を歩く時は、足元が定まらないために転ぶかもしれないという不安感や、足首やひざがねじれて「ねんざ」でも起こしそうな気持がするので、同じ距離を歩くにも雪のない道路よりもずっと疲れるような気がします。

しかし人類が生まれて以来、ほんの数十年前までは、でこぼこ道やぬかるみを歩いたり走ったりする生活が当たり前でした。
現在のようにきれいに舗装された路面しか歩く場所がないとか整地されたグランドでしか運動する機会がないというのは、 たくましく生きていく上ではむしろ恵まれない環境におかれていると考えなければなりません。



雪や砂の上を走る


雪道や砂の上を歩く時は、ひざや足首がねじれたり引っ張られたりする瞬間にそれをもどすための筋力が発揮され、たえず「じん帯」に刺激が加えられています。
「じん帯」というのは、関節と関節を結びあわせている組織です。

スポーツ医学者として有名なマーキン博士は、『関節のまわりの筋肉をきたえることによって「じん帯」が厚くなり、けがの防止に役立つこと、そしてそのための最善の方法は可能ならば、雪や砂の上を走ることである』と忠告しています。

また、雪道を歩く時は、からだのバランスを保つためにたくさんの筋肉群が活動し、筋肉の活動を支配する脳や神経もトレ-ニングされています。
このような能力は、スキーやスケートのようなウィンター・スポーツはもとより、あらゆるスポーツで欠かせません。



ダグラス・バッグという袋


クロスカントリースキー、マラソン、スケートをはじめ多くのスポーツでは、 持久力(運動中に呼吸しながら酸素をとりいれることによってエネルギーをつくりだしていく能力)が優れているかどうかによって勝敗が決まります。

運動中に酸素をどの位とりいれているか、どのくらいのカロリーを消費しているかは、写真のように運動中にはきだされた呼気をダグラス・バッグという袋に集め、酸素と炭酸ガスの割合を測定して決めます。



トレーニング効果が大きい


除雪されていない雪道を歩く時は、当然雪のないところよりも余計にエネルギーを消費します。
このことを考えると、一定の時間に酸素を取り入れる能力(呼吸循環性持久力、有酸素性能力)を高めるためのトレーニング効果が大きいことになります。



深くうまるほど運動は強くなる


ラマズワミーたちの研究によると、図のように雪の中に足が深くうまるほど運動の強さが高まります。
足がうまる深さが30cm位になるとゆっくり歩いても時速8kmのランニングと同じ程度のトレーニング効果がえられるのです。



♦60kgの体重の人たちが、自然な速度で歩いた時の雪の深さとエネルギー消費量との関係(ラマズワミーたち、1966年)