ボブスレーの競技成績は、次の3要因によって決まります。
これらの中でも、特に競技成績を大きく左右するのは、選手のダッシュ力です。
なぜ“ロケットスタート”がボブスレーの競技成績を左右するのでしょうか?
またどのような方法でそれが確かめられたのでしょうか?
ここではタイム分析やスピード測定装置を用いた、わが国の研究について紹介しましょう。
なぜ“ロケットスタート”がボブスレーの競技成績を左右するのかについて説明しましょう。
スタートタイムとゴールタイムの関係について示した図をみてください。
横軸はスタートタイムを示し、左のほうに寄っているチームほどスタートタイムが速い。
つまり“ロケットスタート”がすぐれていることになります。
また縦軸はゴールタイムを示し、下に寄っているチームほど、競技成績がよいことになります。
どうですか?
スタートタイムの速い国がゴールタイムすなわち競技成績も良いことに気づくでしょう。
したがって、日本チームが4人乗りボブスレーで金メダルを取るためには、スタートタイムで4.9秒台を出さなければなりません。
つまり、日本チームがスタートタイムをあと0.2秒縮めることが必要なのです。
それでは、スタートタイムを縮めるにはどうしたら良いのでしょうか?
2人乗りのソリの重さは200kgあります。
選手がソリを押す距離は約50m前後です。
選手は陸上競技の選手のように腕を振りながら走ることはできません(図の中でパイロ
ット選手がソリを押しているときの動作分析をした姿をみて下さい)。
走路は写真で示したような、急な下り坂になっています。
そこでわが国では、足が速くて力持ちの選手を他のスポーツからスカウトしています。 また選手のスタート技術が上手か下手かを知るためにスピードメーターをソリに取り付けていくつかの実験をしました。
ボブスレーのスタートは、2人または4人で呼吸を合わせながらソリを押し出します(A)。
実験の結果、
ソリを押し出して走る動作に入るところ(B)
パイロットがソリに乗り込むところ(C)
でスピードの減少がみられました。特に、
後方の選手が乗り込むところ(D)
では、大きな減少がみられることがあります。
このようなことがわかってから、図に示した良いスピード曲線を出せるように、選手は技術練習を行うようになりました。
“ロケットスタート”の技術を向上させるため、アメリカ、カナダ、日本など多くの国々が、 実際のソリに車輪を取り付けたローラーボブスレーで、夏の間もトレーニングを実施しているのです。