皆さんは長野オリンピックで聖火の点火者を務める伊藤みどりさんのことを知っているでしょうか。
彼女は、1989年の世界選手権大会で、日本人で初めてフィギュア・スケートの世界チャンピオンになりました。 また、前々回の1992年のアルベールビル・オリンピックでは銀メダルを獲得しました。
伊藤みどりさんは、女性として世界で初めてトリプル・アクセルという難しいジヤンプに成功した選手でもあります。
ジャンプは踏み切りの方法と回転数で、種類や難しさが決まります。
トリプル・アクセルというジャンプは、左足の前進外側のエッジで踏み切り、空中で3回転半の回転をし、右足の後進外側のエッジで着氷するジャンプで、大変に難しいジャンプの一つです。
審判員は踏み切り、空中での回転、着氷の様子や姿勢を見て、ジャンプの種類や回転数、成功か失敗か等を判断しています。
みなさんの中には、「すごいジャンプだな」とは感じても、ジャンプの種類が何だったのか、あるいは何回転まわったのか分からない人も多いことと思います。
実際にこのジャンプを、2方向から毎秒100コマという高速度の16mm映画カメラで撮影し、三次元的な座標解析を行なってみました。
空中に浮いている時間はわずかに0.73秒間しかなく、回転速度は1秒間に5回転という高速で回転していることが分かります。
伊藤選手の場合には、表に示すように、回転数が増えるほどジャンプの滞空時間は長くなり、回転速度は、回転数が増えるほど速くなります。
また、トリプル・アクセルを跳ぶときの伊藤選手の助走速度はおよそ秒速8m(時速29km)であり、ジャンプの高さは66cmでした。
高くジャンプするほど、滞在時間は長くなり、滞在時間が長いほど空中での回転がしやすくなります。
高くジャンプするためには、助走速度が速いほうがよいということも、実際のジャンプを分析した結果から明らかになっています。
皆さんがフィギュア・スケート競技を見ていて「すごいな」と思うようなジャンプは、このように、速いスケーティングによる助走から、高く跳び上がり、速く回ることによって作り出されるのです。
そして、そのようなジャンプのできる選手が技術の高い選手です。